◆第23話の感想◆

「化石の森の闘い」。

シーラカンスのラカンという魚がでてきます。
シーラカンスは当時話題になった古代魚の仲間で、発見されたのがマダガスカル沖だったと思います。
「生きた化石」という「表現はこの魚が最初でしたっけ(?)
この話も当然その海域と思われます。
(地図もでてきたし)

この話の中ではポセイドンによって永遠に死なない身体にされた哀れな老魚という設定で出てきます。
普通は不老不死は皆の望むところですが長すぎる「生」は苦痛でしかありません。

まして若々しいままの長寿ならまだしもどんどん老いさらばえていって仲間がいなくなるのに自分だけが
過去を抱えたまま生きるのは地獄以外の何物でもありません。
映画では「ハイランダー」とか思い出します。
今は亡きクイーンのボーカル(フレディ・マーキュリー)が歌う「Who Wants To Live Forever」が印象的でした。
近年では長寿に悩む看守をえがいた「グリーンマイル」などが思い起こされますが。
高橋留美子さんの「人魚の傷」「人魚の涙」も不老不死による悲しみがテーマだったような。
あう脱線。

この過去の遺物のような孤独なラカンの姿は15話の仲間のいないひとりぼっちの恐竜とも重なります。
ラカンはトリトン族が楽にしてくれるというポセイドンの言葉にトリトン達の出現をまちづつけるのです。

ヘプタポーダの逃亡を助けたということですが、それはいったいいつのことやら??
ヘプタポーダは何歳!?と思わず計算したりして;;;;

自分はヘプタが牢獄に入れられた時にラカンが逃亡を助けたと思ったいたのですが、それなら約10年でラカンが不死に苦しむ期間としては短すぎます。

だからヘプタポーダが製造(?)されて、まもなく自分に目覚めたポーダが逃亡を図り、それに同情したラカンが罰を受けた・・と。でもこれでもたかだか数百年だな・・・・・・。 でも不老不死に苦しむにはちょうどよい頃合いかしらん。

・・・・・あんまり深く考えるのはよそう(^^)

話が前後しますが、初めの方でヤジドリにラカンの消息を尋ねるところが好きです。
上に止まるのを嫌がるイルに「ちょっとぐらいとまらせてやれ!」とかトリトンがいって、いやそうにイルがヤジドリ達をのせてるところ。あまりコミカルなシーンがないのでけっこう楽しんでこの場面を思いだして描いたりしてました。

でもせっかく 会えたラカンは何だか冷たいし、トリトン達のことを「本当にトリトン族か」と疑う。
人魚もいるのに、このおじさん、疑り深いよね。長いこといじめられてきて、疑り深くなっちゃったのかな。
「この水の中の音を聞き分けられないトリトン族なんて」、といわれてしまう。
陸の生活が長いから感覚が鈍ってしまったのかな。

 

   
化石の森というのが不気味。
ラカンに連れられて化石になったトリトン族の(と言うよりほとんど死体)を 見るトリトンたちだが、この人々の姿が何だかすごくリアルで怖くて、鎖につながれたり 苦しそうだったり。 トリトンが軽く触れただけで崩れる腕なんてとっても描写が残酷でショッキングで、 あまり気持ちの良い映像ではありませんでした。
・・・・ちょっとエグイ。
 (描きたくない・・・でも放映当時このシーンを思い出して描いたような気がする・・・・。 印象が深かったということだね)
 

後に「ポンペイ展」で火山の犠牲になった人達の遺体のかたどりというものをもみたとき、この化石になった 人々の映像を思い出してしまいました。空を掴んだり苦しそうだったりとってもリアルだったので、そういう 「断末魔」の苦しみというのを感じました。


そして、この古(いにしえ)のトリトン族の凄惨な姿は、トリトンとポセイドンの闘いが、実際はポセイドン側の
一方的な 「虐殺」に近く、どう見てもトリトン族が悪かったから、という論理展開にならない。
誰でもこれを見れば「ポセイドンはヒドイ」という感情になり、ますます最終話ではぎゅうといわせてやるぞ、と
言う気分になってきます。
こうして最終話での逆転なんてだーれも思いつかないのであります。

この化石になった人々の物語というのも想像してしまいますね。
かつて壮絶な闘いがポセイドンとトリトン(族)の間でくりひろげられたということでしょうね。
ドラマをかんじてしまいます。
ラカンは「オリハルコンの剣を使いこなせる様になる前に滅ぼそうとした」と言ってたけど、裏にはもっと隠れた
ドラマがありそうです。
男性ばかりで女性がいない。「戦士」だったのかしらと思います。
でもあんまりハンサムがいなかったなあ(コラッ)
なんかトリトンとピピ以外のトリトン族が話に出てくる時の絵って険しい顔の人が多くて怖いんだもん;;
まだトリトンのご両親の方が美男美女ですねえ。
なんかカッコイイ、トリトン族っていなかったのかしらん、と横道にそれた妄想ばかりしていました。

あと主人公の成長にもマイナスなんです。
ホントにこの話では「大人」の味方が出てこない。トリトンを指導する人(?)はみんないなくなってしまう。
その代表が3話でいなくなったメドンだけど、長老的存在が全然いない。
こういうのも珍しいと思うけど。
唯一の可能性の「長老」は大西洋のポセイドンなんだけど、ここではまだ恐ろしい神像としかでてこないので
「指導者」になるかどうか、わからないし、この時点では「敵」そのもの。
むずかしいのう。

またトリトンたちはもうこんな形でしか仲間に会えないのか・・・・・
そんなことを思ったシーンでした。トリトンは一人。どこまで言っても一人。
人魚のピピはいてもトリトンと同じ姿の仲間はもうドコにもいない。
トリトンだけでなくピピの両親の生存も絶望的になって、さらに夢を打ち砕く悲惨な話です。

こんな「夢」のない話をしていいのかなあ。
最終回まであと少しだよ。
でも、そうやってどん底に突き落としておいて、最後に実は生きていたんだよ〜、とやってくれるのかな、
と期待も持った話でした。
 

海ムカデのセイノスってのが気持ち悪い〜。足のたくさんあるのはキライです〜;;;
ブルーダはオリハルコンの輝きがトリトンが疲れると出ないことを知って色々しかけてきます。

「よし、陽動作戦でいこう!」

「陽動作戦」という言葉も初めてきいた言葉でした。
再放送の時に録音したテープを書き写したのですが、はじめわからなくて「誘導作戦」とか書いていました。
敵の注意を別の方向に引きつけ、違うところから攻撃するということですよね。
トリトンってすごいな。こうやって戦おう、とか色々作戦をねってイルカたちと打ち合わせをしていたのかなあ。
なんだかカンペキに「戦士」だね。というより「作戦隊長」だよね。たのもしいです。
 

ブーメランで次々遅うブルーダ。
トリトンの危機を身をもってかばうラカン。
「ワシを楽にしてくれる人なんだからな」
「ラカンを楽にする」とは結局「死なせる」ということ。
でもラカンを失うことは貴重な味方もまた失うことになる。
オリハルコンの剣を抜くとブルーダは倒せてもラカンも命も消えてしまう。
ジレンマに悩むトリトン。

そのトリトンの隙を衝いて攻撃してくるブルーダ。
トリトンをかばったラカンにブーメランの攻撃!そして目をやられるラカン。
「不死身でもめくらにはなるわ!」
ここも例によってDVDでは音声カット。うううーん、もう許してくれよ。30年前のアニメなんだからさ。

話ぶっとぶけど、イタリアのシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの「最後の審判」の絵は、初めキリスト様も
他の聖人も みーんな「素っ裸」だったそうで、それが当時のローマ教会が「破廉恥だ」とせっせと腰布を描かせて、
でもそれが現代になって、 「原作を尊重する」という意識のもとに修復されてはずされるらしい。(もうしたのか?)
そんな風に時代の価値観って変わるんだから、「資料性」としてほっといてくれよ。
一般に放映しないでさ、個人で高いお金出して買うものなんだからいいじゃないのかね。
そしてそういう言葉を使ってしまった意味や時代背景をきちんと伝えていけば良いんではないかなあ、と
「素人」の自分は思います。
 

ブルーダのやっつけ方がすごい!まっすぐ向かっていってオリハルコンでひと突き!
なんだか輝かせてその輝きで間接的に溶かすとかいうのでなく、ぐさって感じでけっこうスゴイ。
トリトンはもう非情な「戦士」だなあ、と思わせるシーンでした。

デモ自分は残酷とか思わなかったです。

当時の自分にはポセイドンは「絶対悪」だし、こんなかわいくてかっこよいトリトンの命ばっかり狙ってるポセイドン
なんて滅びてトーゼン!と思っていたからトリトンが幾ら残酷な殺し方をしても当たり前、と思って見てました。
白土三平さんのバタバタと人が斬られるようなマンガをよく見ていたからでしょうか。
「当たり前」に思っていたのです。
化石になった過去のトリトン族の苦しみを思うとこれぐらい何さ、というかんじでした。

同時にラカンも崩れてしまい、「死」を迎えます。
死でもってしか安らげないのもなんだか哀れ。
そしてトリトンたちは導いてくれる「師」をまた失うのです。
これも主人公の「成長」にマイナスポイント。

「ポセイドンの方がオリハルコンの事を知っている。・・・・なぜだ?」

トリトンの疑問=視聴者の疑問です。
この話はポセイドン族をやっつけること=トリトン族の謎解きになっています。
しかしそれには「オリハルコンの謎解き」という大きな問題が出てくることに気付かされます。
トリトン族誕生の謎にオリハルコンが密接にからんでいる。
そう思わせる意味深な話です。
 

自分はこの辺からもう自分なりの最終話と自分流の「謎解き」を作り上げてしまって、何だかTVのストーリー進行はその確認の為に見ていたような気がする。
詳細は忘れましたがとにかく大西洋には秘密が全部ある。
もしかしたら、オリハルコンの固まりみたいなのがどーんとあって、ここからその剣は作り出されました、なんて事があるかも、と想像してました。(アホじゃのう)
裏切られましたが。

ブルーダのデザインが原作のポセイドンそっくりで、読者サービスかなと思ったりする。
手塚先生の原作の怪人もそれなりにユニークですが、TVのトリトンは全体が劇画調でシリアスで、コミカルで曲線的なデザインは似合わず、自然と手塚調が排除されるかたちになっています。
この元ポセイドン王のデザインも羽根さんの手腕によりかっこよくなっていていてすっきりしたモノになっています。
ブルーダはもっと活躍してもよい怪人だと思いました。
 

この回も作画が荒かったです。セイノスとの闘いなんてもうガタガタ。
前半のトリトンの絵の方が整っていました。後半はプロポーションも変だし、太ってるぞ!(オイ)
ちょっと見直すとツライ物がありましたが、スゴク迫力がありました。
 

↓オマケ

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