21話の感想

ヘプタさんの死が予見できる回。
なぜなら、予告に「トリトン達は貴重な味方を失って行く・・・」というナレーションがあったから。
(これは憶えていました)

20話でトリトンの味方をしたヘプタさんだったから、ちょっとやばいな、と言う感じはあった。
でもこんな死に方をするなんて・・・。結構ショックでした。

トリトンの反応がおもしろい。

ヘプタに向かって「ねえ、僕たちと一緒にこないか?」だって!ぶりっこしてるぞ!!

トリトンはヘプタさんに味方、と言うより仲間として迎えたかったんじゃないかな。
だって、彼女強そうだし、いれば何かと役にたちそうだもん。
何より足手まといになるピピよりも彼女は闘えるのだ!!
トリトンは闘いにちょいと疲れていたりして。

その辺のことピピは察知していて、キツイ言葉を投げつけたんじゃないかな。

「この人がいるとあたし達も危険な目に遭うのよ!」
ピピの勘って鋭い!!
もしピピに足ができていて、トリトンのように武器を持って闘っていたら、結構強くて非情な女戦士になっていたかも。
ヘプタなんかも「あとあとの紛争のネタになるから」とばっさり殺していたかもしれない。
トリトンの方が「情」のある感じだったりして。
(この辺が陸の人間に育てられたトリトンと、ピピとの違いかもしれない」)

ヘルメットをぬいで、別れを告げるヘプタ。ヘプタポーダは「ポセイドン族でもなく、とらわれの身でもないヘルメットなしのヘプタさん
ヘプタポーダ」と言っています。これはとても大変なことです。
ずっとポセイドン族の女戦士としてやってきたはずのヘプタポーダ。
あるとき、青い海と太陽を望んだために幽閉された彼女。
その彼女にポセイドン族としてでない生き方なんてできるのでしょうか。
口で言うのはかんたんだけど、とても困難なものを感じます。
そして、それはトリトン達にも「トリトン族」「ポセイドンと闘っている一族」という枠をハズして生きられるか、
という鋭い問いを投げかけているように思います。
こんな根元的な事がセリフにさりげなく出てくるTVアニメってあったでしょうか。
すっと聞き逃すと何でもないセリフが意味深でコワイぐらいです。

そして「もっと早く、あんた達みたいなトリトン族に会いたかった」と言います。
これも意味深です。おそらく彼女は昔トリトン族と闘ったり手に掛けたことがあるのでしょう。
そのトリトン族は弱々しく、戦いがいのない連中だったのではないでしょうか。
でもいま彼女が出会ったトリトンは、ポセイドンとも対等に闘える力があり、不思議な武器を持っています。そして、この海を支配するポセイドンの暗い力を倒そうとしている。
そういう「希望」をもって闘っているトリトン達をうらやましく思うのでしょうか。
それとも、「もう遅い」と言う意味が込められていたのでしょうか。
あまり深く考えてはいけないのかもしれませんが、引っかかるセリフでした。

色々あってゲルペス連隊との戦いのあとのこと。
トリトンはヘプタの髪に触ってます。サンゴにからみついた髪を優しくほどいてあげています。
内心ドキドキしてたりして。
男性諸君、年上の女性の長い髪に触るのって勇気がいりますか??
やっぱり平気じゃいられないでしょうね・・・・。
私はこれは一種のラブシーンだと思います。

 彼女はトリトンを殺そうと思えば殺せるほどの腕の持ち主なのです。
その彼女に助けられた。これってかなり大きな「借り」では??
その借りの気持ちが恋愛感情に変わっていくと言うことはありえるでしょうか。
よく時代劇なんかで、親の敵なのに命を助けられて惚れてしまった、とかって話がけっこうあって、そんなのウソ!と思っていたけど、持っていた憎しみの感情が大きいほど、それが裏返った時大きな慕いの感情に転化していくのでは、と思いました。
これはトリトンの立場だけでなく、ヘプタの方からもそうではないかと思います。

20話でヘプタは言ってます。「それがうらみもないあの子への、せめてもの思いやりさ」
立場上闘わなければならない事をよく示しています。

ちなみに原作ではこのふたり、カンペキに恋愛関係です。

原作では、ヘプタポーダ→トリトンへの恋愛感情です。
そのため、彼女は原作トリトンを殺せず、自殺します。
原作トリトンもポセイドン族である彼女と理由もなく殺し合うのに疑問をもっています。
でも原作トリトンはヘプタポーダを、彼の義理の兄和也との取引の材料に利用します。
その点かなりクールな大人、という印象があります。
ヘプタポーダをにくからず思いながらもしっかり「人質」として活用するところがすごいです。

TVではトリトン→ヘプタポーダへの思慕、と言う感じですね。
ただ、TV版ではトリトンの年齢が少し低く、設定も違うのであからさまな恋愛関係になっていませんが、二人が協力してゲルペス連隊をやっつけたりするところはピピは排除されていて、二人の濃密な協力のシーンになっています。
これがもしトリトンが成長でもしていて、青年になっていたら・・・。
ラブシーンの一つや二つ入りそうですね。

これはやばい、かなりやばい。
トリトンはヘプタに心奪われてるよ、きっと。
やっぱり美人だからかなあ。

 私ははじめ、恋愛感情的な物はトリトンは感じていなくて(またそういう意図もふくまれなくて)、
単純に味方をしてくれたヘプタポーダが死んでしまったから悲しいのだろうと思っていました。
でもトリトンのセリフ、ヘプタのセリフ、ピピの対応、二人の協力の様子等つぶさに見ていくと改めて制作者の秘められた意図のような物が見えてくるような気がします。

  こうしてみていくとヘプタの死の場面に直面した時に、トリトンの異様なほどのオルハルコンの
輝きの演出に納得がいく。あれはトリトンの怒りと悲しみだと思いました。トリトンは全ての感情をオリハルコンの中に注ぎ込んだのです。
 これ以後トリトンは「オリハルコン」と叫ぶようになり、剣に「お願い」しなくなります。
自分の憎しみと怒りの感情を剣に込めたとき、最大限に剣の力が発揮されると確信したからです。

 ラストシーン、埋葬のシーンはつらかった。

 私はヘプタが倒れてそれっきりだと思ったので、「埋葬」するとは思わなかった。
(実はトリトンが「オリハルコン」と叫んだ時、ヘプタの亡骸も消し飛んでしまったのではと思っていたのです)
そしてそれが不安な印象だったのは、子どもには理解できない大きな感情が横たわっていたからだったのかもしれません。
 わざわざ埋葬のシーンを入れたのはトリトンのヘプタポーダへの想いと、ヘプタの死に象徴されるポセイドン族の悲劇を表しているのではないか、と思いました。

それに私はトリトンがどんな思いでヘプタの亡骸を抱き、どんな思いで海上に連れて行き、どんな思いで穴を掘ったのか、
そういうことを想像するだけで胸がいたくなります。
おそらく誰にもさわらせないぞ、という気迫があったのではないでしょうか。
彼女の夢をせめて遺体になった後でも叶えたい、そう思ったのではないでしょうか。

 この時点ではまだ最終話はみていないのでわかりませんが、最終話を見た上でみなおすと、ヘプタポーダは地下にいたポセイドン族の象徴だったのかもしれません。その夢は叶えられるハズもなく、結局自滅していくしかないのです。そしてそれを弔うのはトリトンしかいないのです。

 この時のトリトンは大人の泣き方です。声をおし殺して泣く。
わあわあ泣くのではなく、静かにこらえながら泣いてる。
その姿をピピをバックにぼかして撮っているのが良い演出だと思いました。
ピピは「背景」なのです。
(この時のピピのセリフ、口が動くのに無音なのですが、多分「トリトン・・・・(あと絶句)」でしょうね。)

ピピはトリトンとヘプタの濃密な世界に入れないのです。
トリトンとヘプタは闘うことしかでしか結びつけない宿命の、出逢いと別れをしなければいけない間柄だったのです。
これはトリトンの大きな悲しみを現している、と思いました。
そしてトリトンの中の希望と夢も、ヘプタと彼女の夢と共に死んだのではないでしょうか。

トリトンの夢。
それは多分、視聴者と同じく、ポセイドンを倒し、平和なイルカ島のようなところを作って
イルカや海の生き物と共に暮らす。海は限りなく青く、太陽は燦々と降り注ぐ。

でも12話でのイルカ島の破壊。
15話での恐竜との別れ。
16話で思い出も踏みにじられたつらさ。
17話のアトラスの城の破壊。
18話のタロスの悲劇。

そして夢を持っていたヘプタの死。

希望や夢は戦いの中で皆壊れていく。そんな印象を持ちました。
私自身もトリトンが最終回まで生きていないのではないかという漠然とした不安がよぎった話でした。

そして事実、物語は後半かなり悲惨になっていきます。

 ※この話は作画が荒いのですが、その辺はわざとハズして感想書きました。(そういうこと言ってるとキリがない   ので・・・)

 ※ああ、レハールが盲目になりましたね。死ななかったのが嫌でした。死んじゃえばいいのにい。
   DVDでセリフの一部にカットがあります。
   マーカス「めくらのまま、永遠にさまようがよい!」の部分です。
   盲目のまま、とでもした方がよかったのかも。

 ※この話も20話と同じく漫画にしようとして下書を何枚か描きました。ヘルメットなしのヘプタさんのイラストは
  その中の一つを清書したものです。
  でも漫画は途中までしか描けてません。
  後半、トリトンのつらい気持ちに気づいてしまい、描けなくなってしまいました。(バカなこととお笑いでしょうが)
  私、トリトンが好きなので、描いてるときはとても楽しい。でもこの時ばかりは筆が止まりました。マジに。
  これはトリトンの恋です。それも激しい。(「海のトリトン」の話って、マンガの話、って笑えない物が多い)
  初恋と大きな失恋です。ヘタすると一生人を愛せないかもしれない痛手ですぞ、これは。
  こんなのってフツー、何度か見るだけで気づくもんじゃないのかねえ??
  私ってば何ページも描いてから、やっと気づくなんて超底抜け鈍感女です・・・。
  う〜ん、ピピがんばれ。トリトンを救えるのは君しかいないぞ。(何を書いているんだ???)

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