ギリシア神話、叙事詩参考文献その1

  『海のトリトン』がきっかけで 自分はギリシア神話に深く興味をもちました。
しかし一口にギリシア神話といっても範囲が広くてどこから手をつけていいのかよくわかりません。
とにかく手に入りやすいものから手当たり次第に読んでいきました。
借りた本がほとんどなので手元にあまりないのですが、比較的安価で手に入りやすいギリシア・ローマ神話を
取り上げたものを紹介します。自分の手元にあるもの中心で少々偏っていますが、ご了承下さい。

  『トリトン』で知るギリシア神話に戻る 
参考文献その2その3

書名 著者と出版社

内容・説明

ギリシア神話

高津春繁
★岩波新書

 一番わかりやすいギリシア神話入門書。
写真や絵も多く、コンパクトで楽しめる。図版も多く、ギリシア神話の世界が味わえる。トリトンについてはポセイドンの息子であるということと、太陽神ヘリオスの后となったロデーときょうだいという記述ぐらいしかない。
右端はポセイドン像。
その左はテセウスとアンピト
リテーの図。
 文中に「失われた小編によると」とか、「残っている断片から」の記述があり、伝えられている以外にもたくさんの異伝があったことがうかがえて、想像がふくらむ。
 巻末にはギリシアの地図と神々の系図が付いている。

オデュッセイアー(上)(下)
(図版は上巻表紙)

ホメーロス

松平千秋訳

★岩波文庫

 

叙事詩『オデュッセイア』の日本語訳。
小説風の平易な日本語で楽に読める。
 原文の韻律(ヘクサメトロス)を生かした訳は、
現在絶版になっている呉茂一氏の版で読むことができる。文語調でリズミカルに巧みに訳されている。もし古書店や図書館で入手されたら御一読をおすすめする。



イリアス
上・下

ホメーロス
松平千秋訳

★岩波文庫

叙事詩『イリアス』の日本語訳。小説風で読みやすい。
トロイア戦争の一部を描いた勇壮な叙事詩の世界が楽しめる。
下巻には伝へロドトスの「ホメロス伝」が付いている。

ギリシア神話の
       世界観

藤縄謙三
★新潮選書


 ギリシア神話の成立、起源などを、「人間学」の立場からとりあげている。ギリシアの気候風土に根ざした神々の役割の解説はおもしろい。特に、英雄崇拝は、地母神信仰と密接な関連にあるとの下りは、目からウロコだった

ギリシアの美術

澤柳大五郎
★岩波新書


 ギリシア人の神話や思想を表現した美術作品の解説。特にエルギン・マーブルといわれる、パルテノン神殿の破風彫刻群の解説や再現図などはおいしい。他に壺絵や墓碑の解説など幅広い。コンパクトにギリシア美術が楽しめる。 ただし著者がポリシーを持って旧仮名遣いで表記されているのだ多少読みづらい。

図説
ギリシア・ローマ神話文化事典

ルネ・マルタン

松村一男訳

★原書房

 単に神々の名の紹介だけでなく、人物や事物の由来、起源、そして、ギリシア・ローマ神話が題材の絵画や彫刻などの作品、映画なども紹介されていて楽しめる。巻末には著者独自の解釈での神話の意味や特徴も解説され、神話の成立などに興味が沸く。
 この本で知った多くの異伝も多く、たくさん参考にさせていただいた。
 ただ、「トリトン」が独立した項目でないのが残念だった。(「アムピトリテ」と「ポセイドン」の項目で解説されている)
 自分が感じたことは、ネレウス(ネレイド)の方が、一般にイメージされている海神トリトンに近い気がした。

 

ギリシア・ローマ
神話

1〜3

(図版は第一巻表紙)

グスターフ・
シュヴァープ

 角 信雄訳

★白水社

 


 ギリシア・ローマ神話の主な話を集めた青少年向きの入門書。
有名な叙事詩のあらすじが楽しめる。

《内容》
第1巻:ヘシオドスの『神統記』の引用や、数々のメタモル  フ
     ォセス(変身譚)、アルゴー丸の冒険、ヘラクレス、テセ
     ウス、オイディプスなどの英雄伝説を網羅。

第2巻:トロイア戦争の経緯と、その後日談の一つ、 アガムノ
     ンの悲劇(いわゆるアトレウス家の悲劇)を紹介。

第3巻:オデュッセウスの冒険譚(これも一種のトロイアの後日
     談)と、『アイネイアス』から、ローマ建国神話を扱う。
     神々の名がローマ名になっている。
     巻末に主な神々の説明がある。
         
※ 私事で恐縮だが、中学一年生の時のこの本を購入したがちんぷんかんぷんだった。
ただ、1巻に海神トリトンが出てきたあたりだけよく見ていた(^^);;
 

ギリシア奇談集

アイリアニス
松平千秋
 中務哲郎訳
★岩波文庫

 原題は「多彩な物語」。古代ローマの著述家アイリアノスが集めた逸話、有名な叙事詩などからの抜き書きや感想などを集めたもの。ヘラクレスの柱のことや、プラトンとアリストテレスの愛した美少年など、どこから読んでも楽しめる。ゴシップネタから高尚哲学までもりだくさんである。
(※カバーが変わっている可能性があります)

ギリシア悲劇
 物語とその世界

 呉茂一
★現代教養文庫


 「悲劇」と呼ばれる作品群についての説明と解説。三大悲劇詩人といわれる、アイスキュロス、ソポクレース、エウリピデースの現存する作品を中心に、登場人物やストーリーだけでなく、それぞれの作者の紹介や当時の上演の形式などが紹介されている。日本の能楽との類似や差異なども説明され、興味をそそる。(古い本なので、絶版かもしれない・・・)