■タロス■

   青銅でできた巨人。
これも神話というより、『アルゴー丸の英雄たち』(『アルゴナウタイ』『アルゴナウテス』ともいわれる)に登場する。
 叙事詩の一つで、作者はアポロニウスといわれる。ヘレニズム期(紀元前3世紀頃)に成立した。元になった冒険譚が伝説となってすでに存在し、アポロニウスが叙事詩の形にまとめたという説が有力である。王女メディアとイアソンの恋は有名である。
 「アルゴー」とは、「速い船」と言う意味である。また人類最初の船だともいう。
 コルキス島にある、金羊毛を取りに行くために多くの英雄がこの船にのりこみ、冒険を重ねた。ちなみに金羊毛を守っている怪物はラドンである。
 トロイア戦争を描いた『イリアス』より前の時代を扱っており、『イリアス』に登場する英雄たちの父が多くこの冒険に参加する。(例:アキレウスの父ペリアス、アイアスの父テラモン、ネストルの父、ネレウスなど→このネレウスは海神ネレウスとは別人である←)ヘラクレスや吟遊詩人オルフェウスもこの船に乗って旅をしたという。

 青銅で出来たタロスはクレタ島の番人で、青銅人の生き残りで不死身だったが、くるぶしだけは肉の腱と、たった一本血の通った血管があり、そこが急所だという。神々の名工ヘーパイストスが作ったといわれる。
 アルゴー丸の英雄イアソンがクレタ島に近づくと、このタロスがアルゴー丸に向かって岩をなげつけ、上陸できず難儀していると、イアソンに恋したメディアが巨人に魔法をかけて、巨人をねむらせた。倒れたタロスは、そのくるぶしを岩に激しく打ち付け、血を吹き出した巨人は、やがて息絶え、海底深くおちていったという。また、タロスは自分の身体を灼熱させ、人を抱いて焼き殺したという。
 また異説によると、巨人のくるぶしの栓を抜いたのはイアソンその人だという説もある。
  このエピソードの前後に海神トリトンが登場する。海の難所、シェルテスという浅瀬をわたるとき、船をかついでトリトニス湖まで運び、海神トリトンの導きで海の道をみいだし、クレタへと向かった。
 また、クレタ島を脱出したあと、アルゴー丸の乗組員の一人エウペモスが海神トリトンの夢をみて、そのとおりにすると海中に投げた土くれが島となり、エウペモスの子孫がここで暮らしたという。またアルゴー丸の冒険の途中にトリトニス湖とか、ポセイドン神も登場し、海神との関連が深い。
 数々の冒険の後、アルゴー丸は海神ポセイドンに捧げられ、後に天に昇って星座になった。

 『海のトリトン』では、第18話にマゼラン海峡を守るペンギンたちの守り神として登場する。設定も似ており、くるぶしが急所というのは同じである。トリトン自身が栓をオリハルコンで溶かし、血液を流出させ、タロスはバラバラになり沈んでいく。
  どちらかというと、原典よりは映画化された『アルゴー丸の冒険』に類似した描写のように思える。映画では主人公イアソンがタロスのくるぶしの栓を攻撃し、血液を流出させている。
 

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