海神ネレウス 

 大地の女神ガイアの息子で、海神である。河の神ともされる。
 ネレウスはポセイドンよりも古い海神で、性格はポセイドンとは対照的に穏やかとされる。
プロテウス
と同様、予言者とされる。変身もできる。また、海の女神ティティスの父である。ネレウスの娘たちは海のニンフ「ネレイデス」(単にネレウスとも称する)としてしられ、大半美しいことで有名である。一般にネレイデスは、海の波や波頭の擬人化とされる。

 このネレイデスよりも自分の娘の方が美しいと自慢したために、神の怒りをかい、その娘を海の怪物(龍とも鮫ともいわれる)に生け贄として捧げて怒りを解け、と告げられたのが有名なカシオペアである。生け贄にされた娘はアンドロメダ、自慢した母のカシオペアは、父王ケフェウスと共に夜空の星座として輝いている。そして、そのアンドロメダの危機をすくったのが、英雄ペルセウスである。(「メデューサ」の項を参照のこと)

 ネレウスの娘のティティスには次のようなエピソードがある。
 ティタン族のプロメテウスは、人類を造った者として知られる。だが、彼は人間に火の贈り物をしたため、ゼウスの怒りを買い、コーカサスの山に繋がれ、毎日鷲に肝臓を食われるという罰を与えられる。食われた肝臓が再生しても、また鷲がやってきてついばみ、彼は未来永劫その苦しみをあじわうのだという。実は彼はある重大な秘密を隠していたため、この責め苦から逃れるのが遅くなったという。
 それはゼウスと海の女神ティティスとの結婚はさけなければならないというものだった。ティティスとの結婚により、ゼウスをしのぐ者が生まれ、ゼウスの地位を脅かすことになるというのだ。彼はこの秘密を漏らさず、そのため3万年もの間、苦しまねばならなかった。
 ようやく英雄ヘラクレスがコーカサスを訪れ、プロメテウスを解放したとき、この秘密を知ったゼウスはティティスをあきらめ、代わりに人間の英雄ペリアスと結婚させる。ティティスも父親と同様、変身能力があり、初めはペリアスの求婚を拒み、大イカなどに変身したという。
 その結婚から生まれたのが「イリアス」の英雄アキレウスである。
彼は父ペリアスを凌ぐ駿足で知られ、トロイア戦争で活躍した。

 このようなエピソードから、古代ではこのネレウスの娘であるティティスは重要な地位を占めていたものと思われる。

 また、トロイア戦争の発端となった、パリスが美女ヘレネをさらって船路で逃げる途中、海の中から「トロイアは滅びる」と言う不気味な予言を投げかけたのがネレウスである。
 トロイア戦争を描いた映画では『トロイのヘレン』が有名である。


  『海のトリトン』
では、ポセイドンの参謀役として登場する。TVのオリジナルキャラクター。顔はセイウチのようである。
  トリトンとは直接対決していない。

「トリトンで知るギリシア神話」トップにもどる