■ミノタウロス■

 半人半牛の怪物。クレタ島のミノス王の宮殿(迷宮=ラビリントス)の奥深くに住むと言われる。ミノス王の妻パシパエが気が狂って牡牛に欲情し、生まれたのが半身半牛のミノタウロスだという。
 パシパエがおかしくなったのは、ポセイドンの怒りのせいで、彼に捧げるべき美しい牡牛をおしみ、別の牡牛を捧げたためだと言われる。

 この怪物に7年ごとに7人ずつの少年少女が生け贄に捧げられていた。そして、哀れな生け贄たちが運ばれる船の帆はいつも黒かった。だがアイゲウス王の息子テセウスは自分はきっとミノタウロスを退治してみせると宣言し、無事に帰還する時には白い帆を揚げて帰ってくると約束した。テセウスは生け贄の中に混じってクレタ島に向かった。 
 テセウスは彼に恋したミノスの王女アリアドネが差し入れた、糸巻きの端を迷宮の入り口に結びつけ、ミノタウロスを倒したあと、迷宮を迷わずに出ることができた。だがその帰還の途中にアリアドネがディオニソスにさらわれ、その悲しみのためにうっかり帆を黒いまま帰国してしまった。それを岬から見たアイゲウス王は息子がてっきり死んだものと思いこみ、悲しみのあまり身を投げた。彼が身を投げた海はエーゲ海(アイゲウス海)と呼ばれる。
 一説によると、テセウスは本当はポセイドンの子どもだという話もある。

 また、ソポクレスの『コロノスのオイディプス』では、テセウスは当時のアテナイの王となっており、オイディプスの最後を看取る役柄となっている。
 オイディプスは父を殺し母を娶るだろうと予言され、それを避けるために故郷を遠く離れながら、結局運命に抗しきれず、実の父を知らずに殺害し母と知らずに結婚した。テセウスも彼の過失により実の父を失っている。英雄といわれながらも、その運命は残酷で過酷である。それとも英雄であるが故に過酷な試練を強いられるのか。

 『海のトリトン』では北の海の氷の迷路の宮殿の奥深くに住む、瞑想好きの怪人ミノータスとして名前を借りて登場する。このキャラクターもTVのオリジナルである。デザインは鎧を着ている所などが、原作のドリッペに似ている。最後は大西洋でトリトンにとどめを刺された。

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