伝令使メドン

 ギリシャ神話というより、叙事詩『オデュッセイア』に登場する。
『オデュッセイア』については「オデュッセウス」の項を参照のこと)

 彼は、「オデュッセウスに仕える忠実な近習(伝令使)」と表現される。館の主のオデュッセウスが居ないことをいいことに、残された妻ペネロペイアへの求婚者がおしかけ、したい放題していた。
メドンはその求婚者たちに反感を抱き、ペネロペイアに味方して、求婚者たちがテレマコス(オデュッセウスの息子)を殺害する計画を企てているのを聞いて、秘かにペネロペイアに伝える。

 ペネロペイアは、トロイア戦争の原因となった絶世の美女ヘレネのいとこにあたる。彼女の父は、ヘレネの父テュンダレオス王の弟である。相当な美人であったことが想像できる。(だが現実にはヘレネの父は大神ゼウスなので、血はつながっていないのだが)
 余談になるが1970年代はじめにポール・モーリア編曲でヒットした「エーゲ海の真珠」の原題は
「PENELOPE(ペネロペ)」で、旅から帰らぬ恋人をひたすら待ち続ける女性のイメージだそうである。

 オデュッセウスが帰国し、求婚者を次々に倒したあと、館の使用人のうち、求婚者の味方をした者は次々と殺された。メドンはテレマコスの懇願により、命を救われる。 

 また、トロイア戦争を描いた『イリアス』の記述に、「ロクノスの小アイアスの双子の兄弟メドン」という部分があるが、『オデュッセイア』メドンとは別人と思われる。

 『海のトリトン』では、トリトンの両親のメッセージの入った法螺貝を預かった大海亀で、文字通り「伝令」役である。しかし、トリトンを守るため、ドリテアの犠牲になり、海底火山で殺されてしまう。
 原作ではガノモスという名で登場する。(というよりは、原作でのガノモスがTVではメドンになったというべきだが)原作では何かあるたびにトリトンがガノモスを訪れ、相談しており、最後の戦いにも深く関与する。そして、物語のラストには彼の遺骸の甲羅のすみかでトリトン族が永遠にくらすのである。

 TV版のメドンの方がより「伝令」役に徹しているようである。
TV版は色々な点で『オデュッセイア』に依拠しているように思う。『オデュッセイア』の地味な伝令役を有名にした功績は大きい。


 

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