■あしたのジョー2■
 鉛筆画。原寸はB5。カラー絵の下絵です。(カラー絵はサイズが大きいので後日データ化します)

 「あしたのジョー2」は20代の頃はまった作品です。

 もちろん、このTV作品は70年代に放映された「あしたのジョー」のリメイク、というか続編です。一大ブームを巻き起こした作品のアニメ化でした。原作連載時に力石の死にお葬式までした、という話もずいぶん後に聞きました。しかし、どうもボクシングの世界が小学生だった自分には怖くてあまりきちんと見ていませんでした。当然、TVも原作もごちゃごちゃで、全共闘世代でもなく、あまり関心のない自分には「どっちでもよい話」でした。

 「あしたのジョー2」が始まると聞いたとき、私はリメイクというものにどうも同意できなくて、ネタ切れだねえ、業界も、原作はとっくに終わってるのに時代遅れだねえ、なんて悪口ばっかりシロウトのくせに言ってました(ごめんね)
 でも作画監督が自分の大好きな杉野昭夫さんだったので、「杉野ジョー」が見たくて、ちょっと様子見のつもりで見始めました。
 ・・・・でもはまってしまいました。第一話のジョーの憂いを含んだ瞳と寂しそうにたたずんでいる姿にどきっとしてしまいました。それに少年院の経験のある影のあるキャラクターというのにヨワイ自分はいっぺんに「杉野ジョー」にほれてしまいました。
 物語は原作をほぼなぞる形で進んでいき、力石の亡霊に悩むジョーがカーロス・リベラとの出会いで立ち直っていき、しかしそのカーロスの変わり様に悲しむ・・・というあたりがとてもつらかったです。そしてそのカーロスの姿が未来のジョーの姿ではないかと危惧し、色々と気をもむ白石葉子がとても美しく、前作より大人の女性に描かれていて自分好みでした。
 ボクシングの世界を描いているので試合のシーンは残酷で痛々しいですが、それより自分の場はバンタム級にあるんだ、と苦しい減量に挑むジョーがもっと痛々しくて、アニメなのに、いや、アニメだからこそものすごい迫力のある描き方でした。
 ラストシーンは色々と説があるようですが、私は文字通り「真っ白」に燃え尽き、命も燃やしたのではないかと思っています。ジョーのあの後の人生って考えられないです。原作と変わりないと言えばそうですが、原作の完成度が高い分、アニメ化はかなりご苦労があったのではないかと思います。
 映画も見に行きました。大筋でTVと同じですが、ラストで旅するジョーの姿が描かれており、私は「回想」と受け止めましたが、あのホセ・メンドーサとの試合の後、ジョーは生きてまた放浪するのだ、という解釈も成り立つ、とどこかで読みました。

上は林紀子。墨+筆。

 好きな話は14話「どこにある・・・ジョーの青春」。
毎日ボクシングの練習に明け暮れるジョーの姿に「哀しみ」を感じた紀子が「わたし、ついていけそうにないわ」といって去っていくシーン。後にジョーの少年院仲間だった西と一緒になる紀子は、とても複雑だったでしょう。ジョーという青年の生き様のすさまじさと悲しさは家庭を築くという所とは縁遠い場所にある、という哀しみを表現していてとても好きです。女性は「安定」を求めます。でもジョーはとても魅力的な男性ですが安定した場としての「家庭」をもてない。
 だけどそんなジョーに引かれる紀子と葉子に「女の性(さが)」を感じます。私もキャラクターとしてのジョーに惚れています。そういう「危険」な香りのする男が自分は大好きだ、と申しておきましょう。
 当時描いたいくつかのカットを紹介します。
      

上:鉛筆画。ラフスケッチ。これもカラー絵あり。
下:墨+筆。下書きなし。

下:カーロス・リベラ。鉛筆画。この人描きにくくてこの一枚だけ。
下:落書き。一応「INTERMISSION」とか書いてある。
下町の子どもの中ではサチコが好きだったな。
紀ちゃん、原作よりべっぴんじゃねえか。

 あおい輝彦さんの声、ぴったりでしたね。ジョーが歌ってるみたいなのであおい輝彦さんのLPレコードを買ってしまった私は大バカもんです(笑)彼の少年時代の写真をみたらすごい美少年でびっくりしました。。(サスガ、元ジャニーズ!)下はジョーの少年時代。多分原作から描いたと思いますが、どの巻かわかりません。その下も多分原作から。ペンと墨です。ジョーの横顔が好きでした。

 そういえば「あしたのジョー・心理学概論」(SUPER STRINGSサーフライダー21:中央公論社)という本がありました。(よく見れば「ウルトラマン研究序説」を書いたところですね。)
 おもしろがって読んでみたら、きちんとした学者さんや弁護士による、ジョーや白木葉子、丹下段平のプロファイリング(心理分析)でありました。原作で傷害罪で捕まったジョーが心理分析官(?かな)に「この少年の心には血も涙もない、乾いた非情な心だけだ」などと言い切られ、重い罪の少年のいく所に送られますが、その鑑定結果を分析官の力量不足、分析不足だと説明し、矢吹丈に必要なのは思い罰ではなく、深い愛情による更生である、なんて説いていて、ずいぶんとジョーの「味方」でおもしろかったです。(ずいぶん前に見たので詳細は忘れていますが大筋こんなところでした)