●原作「トリトン」の世界●
その1:初めに

TVアニメ「海のトリトン」には手塚治虫さんの原作マンガがあります。

 わ−い!トリトンの世界がマンガで読める!と大喜びして手塚さんの原作を買って読んで、
「・・・・・なに、これ全然ちがうじゃん!」と驚かれた方は多いと思います。

 また、手塚治虫氏といえば「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「どろろ」などアニメ化された有名作品が多く、その影響もあって、TV版のトリトンが手塚氏によって「直接」作られたもの、と思っている方も多いのではないかと思います。

 事実、前記の作品はなんらかの形でTV版に手塚氏が参加していることが多く、(多くはキャラクターデザイン、TV版ストーリーの作成、コンテを切る、等の形で)TVの作品 には何らかの手塚テイストが盛り込まれるのが普通だったのです。
 
 でもいろいろな事情があり、TVの「海のトリトン」の方は原作マンガを書かれた手塚治虫さんがまったく制作に関与していないため、TV版はオリジナルバージョンに 近い展開になっています。
(それについては「富野氏の原作の見解」で別記)

 しかし、トリトンやポセイドン、と言うネーミング、トリトンが陸で育った海の人間であること、ポセイドンが
圧倒的に優位でトリトン族が滅びかかっていること、ルカーというトリトンの母 代わりのキャラクター、また将来トリトンと結婚することになるであろう、人魚のピピの存在、イル・カル・フィンなど、TV版にも共通の設定やキャラクターが存在します。
 
同時に違いも多く、原作ではトリトンは和也という少年に拾われ、その母に養育されて育ち、年齢も13歳とありますが、印象がずいぶん大人です。ポセイドンも人間と多く関わりを持ち、キャラクターデザインも 設定もまるでちがいます。

 
私自身、先に原作を知っていたのですが、TV版を見て、かえって原作はなぜああもTVの世界とちがうのか不思議でなりませんでした。
 小学校以来、素朴にこの疑問をもったまま、手塚氏の著作や評論やあとがき、富野氏のインタビュー記事などを探すようになります。

 ここではTV版とマンガ版はストーリーがちがう、と言うことと、手塚氏が現場の制作に関与していない、ということを前提に、原作マンガのトリトンの世界を自分なりに説明していきたい、と思います。

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